概要
今回は新しく運用開始になる「発達する熱帯低気圧5日予報」に関連して、配信資料に関する技術情報第530号を紐解いてみたいと思います。-
気象庁は、令和2年9月から、24 時間以内に台風に発達すると予想される熱帯低気圧(以下、「発達する熱帯低気圧」という。)の予報について、これまで24時間先までの予報のみ提供していたものを、5日先まで提供します。
配信資料に関する技術情報第530号 冒頭より
近年、日本の近くで発生した台風が接近して被害をもたらすような事例がありました。より早い段階から、台風進路図等を見ることができれば、防災対応の準備をより適切に行うことができます。
ここでは、各データの変更についてピックアップします。
- 台風解析・予報情報(5日進路・強度予報)電文(VPTWii [ii=60~65])の運用変更
- 全般海上警報(VPZU52)の運用変更
- 地方海上警報(VPCU51)の運用変更
- 全般台風情報(VPTI50)における「発達する熱帯低気圧に関する情報」の提供
- 新規運用開始データと関連データの終了予定について
台風解析・予報情報(5日進路・強度予報)電文(VPTWii [ii=60~65])の運用変更
台風解析・予報情報電文(5日進路・強度予報)で、台風発生予想の時に、24時間先の予報の後に48~120時間先の予報が追加されます。(配信資料に関する技術情報第530号 別紙1より)
フォーマットの変更はないのですが、熱帯低気圧の段階では24時間先までしか入っていないと想定された処理の場合は対応が必要ですね。
予報の要素は台風と同じです。なので、暴風警戒域も含まれます。
全般海上警報(VPZU52)の運用変更
全般海上警報(VPZU52)でも、フォーマットに変更はありませんが、発達する熱帯低気圧の段階で48~120時間先の予報が追加されます。(配信資料に関する技術情報第530号 別紙2-1より)
地方海上警報(VPCU51)の運用変更
地方海上警報(VPCU51)は、48時間先までの予報が追加されます。(配信資料に関する技術情報第530号 別紙3より)
全般台風情報(VPTI50)における「発達する熱帯低気圧に関する情報」の提供
全般台風情報(VPTI50)は、現在は台風になってから発表されますが、この運用変更で、熱帯低気圧の段階から「発達する熱帯低気圧に関する情報」として発表されるようになります。(配信資料に関する技術情報第530号 別紙5より)
情報番号が枝番になる、とあるので、整数値で想定しているシステムでは対応が必要になりそうですね。
新規運用開始データと関連データの終了予定について
台風の暴風域に入る確率の新しいデータが運用開始になります。これらの関連データの終了予定をまとめておきます。新データ名 | 新プロダクト運用開始 | 関連データ | 関連データの終了予定 |
---|---|---|---|
台風の暴風域に入る確率(R2)(GPV) | 令和3年3月頃 | 台風の暴風域に入る確率(GPV) | 3日予報は令和2年度末までに、5日予報は令和3年度末までに |
台風の暴風域に入る確率(R2)(電文) | 令和3年3月頃 | 台風の暴風域に入る確率(5日)電文 | 令和3年度末までに |
新しい台風の暴風域に入る確率(R2)は、電文・ファイルともに、これまでは日本に影響を及ぼす台風だけに配信されていましたが、全ての台風・発達する熱帯低気圧に対して配信されます。これまでは配信は夏期がほとんどでしたが、新しいデータは通年で配信され、頻度が増えると思います。
まとめ
気象庁が令和2年9月から運用開始予定の「発達する熱帯低気圧の5日予報」について、各データの変更などを解説しました。システム対応等のご参考になればと思います。この記事を書いた人
K.Sakurai
気象予報士/技術士(応用理学)/防災士
総合気象数値計算システムSACRA、データ提供システムCOSMOS及びお天気データサイエンスの開発に一から携わる。
WRF-5kmモデル、虹予報、虹ナウキャスト、1㎞メッシュ雨雪判別予測データ、2kmメッシュ推計日射量を開発。
趣味はバドミントンと登山。