OTENKI Data Science

TechBlog

K.Sakurai

【データ解説】虹ナウキャスト

はじめに

この度、プレミアム気象データ「虹情報」をリリースしました。
虹は、太陽の光が雨粒に屈折・反射することによってできる半円状の大気光学現象ですが、幸せのシンボルと言われるように、見ることができると嬉しい気持ちになりますね。思わず写真を撮ってSNSにアップしたくなるでしょう!
次節で説明しますが、虹を見るにはコツが必要です。そのような虹が見える条件が揃っていることが分かったら、楽しいと思いませんか!

これまでは、虹予報というプレミアム気象データを提供してきました。虹予報は、当日と翌日に虹を見ることができる可能性を予測したデータです。一方で、虹情報は、今まさに虹の見える条件が揃っているかどうか、という情報です。これを可能にしたのが虹ナウキャストという、虹の見える条件になっているかどうかを解析するシステムです。この独自に開発した虹ナウキャストについて解説します。

虹の見える条件

虹の見えるメカニズムについて解説します。ご存知の方は読み飛ばして頂いて大丈夫です。

虹は、水滴(雨滴)に入射した太陽光が屈折・反射し、分散して見える7色の光です。
写真のように、実際には7色とはっきり見えず、連続した色の変化が見られます。
虹を7色の光として、虹の問題を解き明かしたのは、かの有名な物理学者、アイザック・ニュートンです。
太陽光が雨滴に入射して屈折と反射するときのイメージと、それを数式で表すと次の図のようになります。
この時、屈折率は光の波長によってわずかに異なるため、屈折した光がずれて、地上にいる我々の目には光の色が並んで見えるというわけです。
この図は、最も鮮やかに見える主虹の説明ですが、赤色の光は虹角(地上からの角度)が42.2度、紫色の光は虹角が40.5度になっています。
したがって、地上で虹が見えるのは、次の図のように太陽の高さが地上から概ね42度以下の場合となります。
例えば、太陽高度が42度の場合を図で表すと、
このように、地面に隠れてしまいます。
逆に、太陽高度が0度(日の出頃、日の入り頃)はどうなるでしょう。
虹の高さに注目してみてください。太陽高度が高い時に比べ、虹が大きく高く見えることが分かります。
このように、虹の見える条件として、太陽高度が重要であることがわかります。
そして、太陽の反対側に雨滴があること、この2つが揃って初めて虹が見える状態になるのです。
虹が「見える」と表現しているように、虹は自発的に発生するのではなく、私達が「見えている」現象なのだということが分かりましたでしょうか。
虹の見える条件をまとめると、以下のようになります。
  • 太陽高度が概ね42度以下
  • 太陽の反対側に雨滴がある

虹ナウキャスト

虹の見える条件は、太陽高度と雨滴の有無ですが、もう一つ重要な条件があります。
はい。そうです。太陽光を遮る雲があるかどうか、ですね。
開発した虹ナウキャストは、雨滴の有無を降水レーダーを用いて解析し、太陽光を遮る雲があるかどうかを気象衛星データから解析しています。
その虹の見える条件がどの程度揃っているかを表す指数として、虹発生確度ROL (Rainbow Occurrence Level)を定義しました。
降水空間判定(rain screen parameter)は、気象レーダーによる降水の位置を解析して虹のスクリーンとなる雨滴の有無を表します。
雲の有無パラメータ(cloud mass parameter)は、気象衛星データから推定した日照確率を表します。
ROLが2の時は、高い確率で虹が見える条件が揃っている、としています。
ROLが1の時は、2の時よりも可能性が低いですが、低い確率で虹が見える条件が揃っている、としています。
ROLが2か1かは、雲の有無パラメータに依存します。
次の図は、ある時刻の降水ナウキャスト(左図)にROLをプロットした図と、日照確率(右図:暖色ほど日照がある可能性が高い)の分布図です。 日照確率が高いところの降水付近でROL=2となることがわかります。

提供データ

お天気データサイエンスでは、虹ナウキャストで計算した虹発生確度ROLが2(高い確率で虹が見える条件が揃っている状態)である市町村を、虹情報というXML形式電文で提供します。
虹情報には、解析と予報があります。解析は現在の状況で「虹の見えやすい気象条件になっている」ということを表し、その都度発表します。予報は解析時刻から30分間「虹の見えやすい気象条件になる可能性」を表します。
発表の種類解析予報
情報の意味現在の状況で「虹の見えやすい気象条件になっている」解析時刻から30分間「虹の見えやすい気象条件になる可能性」
発表頻度解析の都度予報発表後30分間は発表なし
虹ナウキャストの解析頻度は10分毎です。虹情報の電文ファイルのフォーマット等は、詳細ページの仕様書やサンプルデータをご参照ください。

虹情報の表示例

虹情報の利用方法としては、例えば、ユーザーのスマホ等の現在位置で虹情報の発表があれば通知する等が考えられますね。 虹が見える状態になっているかどうかは、ふと空を見上げて虹が見えて初めて気づくことが多いと思いますが、そのほとんどは気づかないままになっているかもしれません。 通知サービスがあれば、空を見上げるきっかけになり、虹を見ることができたら楽しくなりますし、大気や雲などの気象現象に興味を持つ方も増えてくれるのではと期待しています。

下の図は、Slack Appを作り、チャンネルにPOSTした例です。
Twitterでも同じようなことができますが、虹情報をタイムラインに表示することで、簡単に通知や状況把握ができるようになります。

解析・予報の精度と利用上の注意点

虹ナウキャストの開発には2年ほど費やしましたが、その解析・予報の精度を検証するのがとても難しいです。
なぜなら、虹の見える条件が揃っているとデータ上で判定できても、実際に見えたかどうかは現地に行かなくてはわかりません。
特に、見えなかった、という情報は得にくいです。虹が見えたときは、SNSに写真等が投稿されて、おおよその時刻と場所が分かる場合があります。 客観的な検証は難しいですが、できる限り情報を集めてチューニングを行っています。

その他、以下の注意点をご理解の上、データを活用頂ければと思います。
  • 虹情報の利用上の注意点
    • 虹は、地上で太陽の反対側に見える、雨の水滴に屈折・反射することでできる半円状の大気光学現象を対象としています。観察者の位置などで見え方が変わることがあります。
    • 解析・予測手法は科学的根拠に基づいた物理式を用いていますが、観測のない現象の予測であるため、誤差が大きい場合があります。
    • 虹の観察時は、雨や周りに注意して、安全に行ってください。特に夏季は、局地的強雨の近くで虹発生確度が高くなりやすいです。

まとめ

プレミアム気象データ「虹情報」のご紹介、その計算システムである虹ナウキャストについてお話しました。
気象データといえば防災情報をイメージしがちですが、災害とは全く関係のない(観察時は雨に注意ですが)情報として、虹ナウキャストは新しい試みとなりました。
虹をきっかけとした楽しいアプリケーションやサービスに虹情報を活用頂けたら嬉しく思います。

この記事を書いた人

K.Sakurai

気象予報士/技術士(応用理学)/防災士 
総合気象数値計算システムSACRA、データ提供システムCOSMOS及びお天気データサイエンスの開発を一から携わる。
WRF-5kmモデル、虹予報、虹ナウキャスト、1㎞メッシュ雨雪判別予測データを開発。
趣味はバドミントンと登山。(自粛期間中は自宅トレ。プロテインの消費が激しい。)

前の記事へ Windows環境でGRIB2形式データをCSV形式に変換する(ある地点のデータを抽出する)
記事一覧へ
次の記事へ 【データ解説】熱中症への注意を呼びかける高温注意情報
  1. お天気データサイエンスHOME
  2. 技術情報
  3. 技術ブログ