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K.Sakurai

GSM-GPV日本域の高解像度化と再現データ

※記事内の情報を利用する際は、最新情報を改めてご確認ください。

気象庁全球数値予報モデル(GSM)の高解像度化

配信資料に関する技術情報第601号および2023年2月10日付配信資料に関するお知らせの通り、2023年3月14日00UTCより、気象庁の全球数値予報モデル(GSM)の水平解像度が約20kmから約13kmに高解像度化されました。
これに伴い、高解像度の全球数値予報モデルGPV(GSM-GPV)日本域(GSM-GPV(日本域0.1度×0.125度))が運用開始になりました。従来の解像度のGSM-GPV(日本域0.2度×0.25度)は、1年半程度の並行配信の後(2024年9月頃)、気象庁では運用終了が予定されています。従来解像度のGSM-GPVを利用されている方は、高解像度のGSM-GPVへ移行する予定もしくは作業の真っ最中かもしれませんが、参考のために変更点について整理したいと思います。
また、別の観点として、気象庁の運用終了後、本サービスで引き続き提供する従来の解像度の「GSM-GPV(日本域0.2度×0.25度)再現データ」の利用価値についてお話します。
ちなみに、GSM-GPVの全球域については高解像度化されていません。高解像度化は日本域のみになります。また、GSM-GPV(日本域0.2度×0.25度)GSM-GPV(全球域)は従来の解像度ですが、水平解像度約13kmのGSMから作成されたGPVで、旧バージョンのGSMが並行運用されているわけではありません。

GSM-GPV日本域の変更点

GSMの水平解像度は約20kmから約13kmに高解像度化されましたが、GPVの水平解像度は「0.2度×0.25度」から「0.1度×0.125度」になりました。水平解像度の変更は、2007年11月以来(配信資料に関する技術情報第269号)で、15年以上ぶりのメジャーアップデートでした。
予報時間間隔は、132時間先まで、地上面が1時間間隔、気圧面が3時間間隔になり、これまで(84時間先まで)よりも同間隔の予報時間が延びています。
ファイルは、データ容量によるためか、細かく分けられており、一日20ファイルから一日60ファイルに増えました。
フォーマットはGRIB2形式に変わりありませんが、圧縮方式が単純圧縮(GRIB2テンプレート5.0/7.0)から複合圧縮及び空間差分圧縮(GRIB2テンプレート5.3/7.3)に変わっています。
配信時刻は、これまでより15分程度遅くなる仕様(配信資料に関する技術情報第606号)ですが、実績としては10分程度の遅れとなっています。
従来GSM-GPV日本域新形式GSM-GPV日本域
水平解像度0.2度×0.25度0.1度×0.125度
地上面1時間間隔・気圧面3時間間隔の予報時間84時間先まで132時間先まで
ファイル数20/日60/日
GRIB2形式の圧縮方式単純圧縮複合圧縮及び空間差分圧縮
配信時刻(132時間先まで)約4時間後約4時間15分後
配信時刻(135時間先以降)約7時間後約7時間15分後

GSM-GPV日本域の並行配信と配信順序の変更

冒頭でも述べた通り、従来の解像度のGSM-GPV(日本域0.2度×0.25度)は、1年半程度の並行配信の後(2024年9月頃)、気象庁では運用終了が予定されており、それまで並行配信となります。また、2023年5月17日付配信資料に関するお知らせの通り、運用開始(2023年3月14日)から2023年6月20日18UTCを初期値とするデータまではGSM-GPV(日本域0.2度×0.25度)を先に配信し、2023年6月21日00UTCを初期値とするデータ以降はGSM-GPV(日本域0.1度×0.125度)を先に配信するように入れ替わります。
配信順序2023年6月20日18UTCまで2023年6月21日00UTC以降
1GSM-GPV(日本域0.2度×0.25度)GSM-GPV(日本域0.1度×0.125度)
2GSM-GPV(日本域0.1度×0.125度)GSM-GPV(日本域0.2度×0.25度)
3GSM-GPV(全球域)GSM-GPV(全球域)

2023年5月17日付配信資料に関するお知らせの表1から抜粋・編集)

配信順序が入れ替わると、GSM-GPV(日本域0.2度×0.25度)は利用可能になる時刻が5分程度遅くなります。
そして、遅くとも2024年9月頃までに、GSM-GPV(日本域0.1度×0.125度)を利用するように移行する必要があるわけです。

従来解像度のGSM-GPV(日本域0.2度×0.25度)の利用価値と再現データ

まずはタイトルと真逆の観点で述べますが、本来、数値予報モデルの高解像度化は、より詳細な現象を捉えられるようになり、予報精度も向上するメリットがあるため、高解像度化されたGSM-GPV(日本域0.1度×0.125度)を活用することはより良い天気予報等の作成に寄与します。
一方で、利用方法によっては、これまでの解像度でも問題なく有効活用されており、高解像度データは不要であるばかりか、システムの互換性確保のために改修によるリスクやコストが発生することがあると思います。
高解像度化が必要ないシステムは、それぞれ事情により様々かと思いますが、わかりやすい例としては、高解像度化前の0.2度×0.25度よりも間引いて使っているケースです。天気図は、高解像度化により細かなスケールの等圧線の表現が可能になりますが、大きなスケールの気圧配置を見る場合、簡略化した天気図を作成することがあり、そもそも格子点を間引いて使っていることもあるのではないでしょうか。もしくは、間引いていなかったとしても、大きなスケールの気圧配置の把握には影響しないかもしれません。
下図は、GSM-GPV日本域の0.1度×0.125度データと0.2度×0.25度データを用いて描いた同じ時刻(2023年5月29日00UTC初期値)の天気図(海面更生気圧の等値線図)です。 どちらが0.1度×0.125度もしくは0.2度×0.25度のデータであるか、わかるでしょうか。どちらの図も格子点を間引かずにそのまま描画しています。
正解は、左が0.1度×0.125度、右が0.2度×0.25度です。南の海上の台風の中心付近で0.1度×0.125度の方が等値線の数が多く、台風の中心気圧をより正確に表現できていますが、大きなスケールの気圧配置を見る分にはほとんど差がないことがわかります。

高解像度化されたデータ特性を活かす必要がないのに、改修リスクやコストだけがかかるのであれば、システム対応はできる限り避けた方が望ましいと言えます。今回は特に、従来の解像度は15年以上も継続していたため、既存システムは長期間動き続けているかもしれません。改修要員の確保も難しいことも考えられそうです。
そのような観点から従来の解像度のGSM-GPV(日本域0.2度×0.25度)は引き続き利用価値があるのではと考えるようになりました。
そこで、本サービスでは、当社システムにおいてGSM-GPVの0.1度×0.125度データを用いて、従来の解像度の0.2度×0.25度データ(GRIB2形式ファイル)を作成し、気象庁の運用終了後、「GSM-GPV(日本域0.2度×0.25度)再現データ」として引き続き配信することとしました。
詳しくはお知らせ(ログインが必要です)および今後の最新情報をご確認ください。

まとめ

高解像度化されたGSM-GPV日本域の変更点および配信順序の変更について整理しました。また、従来解像度のGSM-GPV(日本域0.2度×0.25度)の再現データの利用価値についてお話ししました。
高解像度化データの特性を活かして利用すること、従来解像度データを効率的に利用すること、どちらを選択するかは利用方法次第です。いずれにしても、GSM-GPVを有効活用する参考になれば幸いです。

この記事を書いた人

K.Sakurai

気象予報士/技術士(応用理学)/防災士 
総合気象数値計算システムSACRA、データ提供システムCOSMOS及びお天気データサイエンスの開発に一から携わる。
WRF-5kmモデル、虹予報、虹ナウキャスト、1㎞メッシュ雨雪判別予測データ、2kmメッシュ推計日射量を開発。
趣味はバドミントンと登山。

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