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K.Sakurai

お天気総合サイト「お天気ナビゲータ」における気象データの活用

2021年3月5日にオンラインで開催された2020年度WXBCセミナーin大阪で講演させて頂きました。
講演では、様々な気象データを情報コンテンツに活用している事例として、お天気ナビゲータにおける気象データの活用内容を紹介しました。オンラインということで全国から200名近くご参加頂いていたようで、お話を聞いてくださることを嬉しく思いつつ、少し緊張しました。
せっかくですので、講演内容をここでも少しご紹介したいと思います。講演資料全体はWXBCホームページに掲載されておりますので、そちらをご参照ください。

お天気総合サイト「お天気ナビゲータ」

お天気総合サイト「お天気ナビゲータ」には、防災はもちろん、登山や釣りなどのレジャーに役立つ情報があります。このサイトでは多くの気象データが利用されていますので、データ活用事例を広く学ぶには最適なコンテンツともいえます。様々なコーナーがありますので、気象データを特徴的に活用している一部を紹介します。
私はデータを提供したり、利用方法のフォローを行う立場ですので、今回は、お天気ナビゲータが提供する気象情報をユーザーがどのように活用しているかではなく、お天気ナビゲータの中でどんなデータを使って、どんなデータ分析・表示をして、どんなことに利用されているか、に焦点をあててお話します。通常、皆さんも気象データを利用される際は、気象庁や気象業務支援センター、民間気象会社からデータ取得されているかと思います。もちろん、お天気データサイエンスもその一つですね。このようなデータ提供サービスから取得した予報や観測データを分析する際は、活用する目的と関係する気象現象をよく理解することが必要な場合があります。この点を少し頭の隅にでも置いて読み進めて頂ければと思います。

桜ナビ

桜ナビは、気象会社らしいコンテンツとして特徴的な、桜の開花予想です。マップによる桜前線や各地域の開花・満開予想日が表示されています。この情報は、お出かけやイベントの最適な時期を検討するのに役立つかと思います。
お天気ナビゲータでは、独自のデータとして、開花メーターという情報が表示されています。開花メーターは、桜の休眠打破から開花、満開までの過程を数値化したもので、つぼみがふくらんで開花、満開にいたる生長過程が今どの段階かわかるようになっています。
そのような桜の生長過程、バイオリズムと呼びますが、これは気温の実況、予報データから計算・予測されています。桜は、前の年の秋からつぼみ(花芽)を形成して、冬の寒さにさらされて眠りから覚める休眠打破、春になるにつれて暖かくなり生長して開花、満開と進んでいきます。予測は何か月も先までになるので、長期予報(季節予報)が利用されています。
桜のバイオリズムを計算していると面白いことが分かります。寒い地域の札幌では、休眠打破するまでの休眠期間が短いですが、春に暖かくなるまでが長いので生長期間は長くなります。一方で、暖かい鹿児島では、冬があまり寒くないので休眠打破するまでが長く、春は早くやってくるので生長期間は短くなります。これを理解すると、冬の札幌で寒さに十分にさらした桜を、春になった鹿児島に持っていくと、理論的には一気に生長が進んで開花する、ということになります。

犬のおさんぽ予報

2つ目のコーナーは、犬のおさんぽ予報です。犬を飼っていらっしゃる方はよくわかると思いますが、夏のアスファルトは、肉球の火傷や熱中症が心配になります。おさんぽ予報では、路面温度予測のデータ分析を活用して、いつ、どれほど危険かの情報が提供されています。
路面温度予測は、日射量や気温、風のデータが用いられています。路面温度は、日射が強く、気温が高く、風が弱く、路面が乾いている条件下で熱くなります。地中へ逃げる熱も含め、それらのアスファルトとの熱収支が計算されています。

登山ナビ

3つ目のコーナーは登山ナビです。登山は私も趣味でやっていますが、登山家は気象情報をよくチェックしています。
登山に一番重要な気象情報は、もちろん防災を目的としたデータです。高山では雷による事故の危険があるため、登山ナビでは、雷注意報はもちろん、発雷確率、雷ナウキャストの情報やマップ表示が提供されています。
一方で、山頂に到達したときに見える周りの見晴らしは、登山者だけが得られるご褒美ですが、雲が多かったりするとガスって見晴らしが悪くなることがあります。せっかく苦労して登ったのに条件が悪いと残念ですので、事前の参考として、雲量等のデータを使って見晴らしの状態の推定した情報が提供されています。(上の写真は私が富士山に登ったときの写真です。山頂には富士山アメダス観測点があります。)

虹予報

最後に紹介する虹予報は、お天気データサイエンスで提供している虹予報が利用されています。全国の虹の予報を提供しているのは、今のところおそらくお天気ナビゲータだけかと思います。
虹は、一般的な雨粒に太陽光が反射屈折することで見える半円状の虹を対象としています。虹の見えやすさの条件として、積乱雲の発生しやすさを大気の安定度で表し、短時間降水の有無と晴天率を掛け合わせて、虹指数という7段階の数値を計算しています。

気象データを活用する上で大切なこと

このように、お天気ナビゲータでは、様々なコンテンツで気象データが活用されていますが、エンドユーザーである一般の方の暮らしに役立つ情報を提供するために、そのニーズに合わせて気象データが使われています。これには、単純に取得したデータを表示するだけでなく、関係する気象現象の科学的メカニズムを理解してデータ分析することが重要です。桜の開花満開予想は、開花・満開日を知りたいというニーズに対して、気温データを使って桜のバイオリズムが計算されています。これにより、予測精度は非常に良く安定していると思います。虹予報も、虹のメカニズムを丁寧にデータ分析に適用したからこそ実現できたと思いますし、オンリーワンなコンテンツであると思います。気象現象は、ダイナミックで繊細な、それでかつ複雑な相互作用のあるメカニズムを持っています。現象をよく見てデータ分析することは、気象データを活用する上で非常に重要だと思います。

この記事を書いた人

K.Sakurai

気象予報士/技術士(応用理学)/防災士 
総合気象数値計算システムSACRA、データ提供システムCOSMOS及びお天気データサイエンスの開発に一から携わる。
WRF-5kmモデル、虹予報、虹ナウキャスト、1㎞メッシュ雨雪判別予測データ、2kmメッシュ推計日射量を開発。
趣味はバドミントンと登山。

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