OTENKI Data Science

TechBlog

K.Sakurai

2024年7月3日~10日にかけての暑さ指数について(速報)

2024年7月3日~10日の猛暑

2024年7月3日~10日にかけて、西日本から東日本の広い範囲で猛暑となり、多くの都府県で熱中症警戒アラートが発表されました。
7月7日には静岡で40.0℃など、観測史上1位の記録を更新する地点もありました。
この期間は、熱中症による救急搬送のニュースも多かったことと思います。
猛暑となった気象学的要因は他で詳しく解説されると思いますので、ここでは期間中の一部の日の暑さ指数の状況について調べた結果とデータからわかることについてご報告します。
使用したデータは、気象庁の地上気象・アメダス観測(主に気象庁ホームページ「全国観測値ランキング」を利用しましたが、統計データも利用可能)、環境省熱中症予防サイトの全国の暑さ指数1kmメッシュ暑さ指数です。1kmメッシュ暑さ指数前回のブログ記事で解説しています。

2024年7月4日

下の図は2024年7月4日14時の1kmメッシュ暑さ指数の分布図です。
埼玉県と群馬県の県境あたりで暑さ指数が33度以上のところが見られました。
環境省発表の暑さ指数(下表:2024年7月4日14時の暑さ指数ランキング)でも、群馬県の桐生で33.4度となっているなど、関東地方では33度を超える地点がありました。
一方で、このランキングの2位には広島県の加計の33.5度があります。
加計は、広島県安芸太田町にありますが、1kmメッシュ暑さ指数では33度を超えるような暑さが分布しているようには見えません。
気象庁のアメダス観測データを見ると、加計の2024年7月4日14時の気温は33.1℃、湿度は76%、風速は1.6m/s、日照時間は0.2時間でした。周囲の観測地点(データは省略)に比べても、湿度が高く、風が弱い状態でした。
このことから、加計では、局所的に暑さ指数が大きくなったと思われます。
観測点の情報はその場所のごく狭い範囲の状況による暑さ指数を示している場合があり、近隣の地点を参考にする場合に、実際にいる場所の暑さ指数と異なる場合があります。1kmメッシュ暑さ指数の分布も参考にすることで観測点での暑さ指数がどれくらいの広さで分布しているのかを把握することに役立つことがわかります。反対に、1kmメッシュ暑さ指数のような格子点情報では、局所的な暑さは捉えることができないので、できる限り実際にいる場所で観測を行うことが重要です。

2024年7月6日

2024年7月6日は、愛媛県、鳥取県、徳島県、大分県で熱中症疑いによる死亡事案が発生したようです(読売新聞記事)。
下の図は同日12時の1kmメッシュ暑さ指数の分布図です。
これを見ると、特に徳島県で暑さ指数が高くなっていたことがわかります。環境省の発表では、穴吹(拡大した図の吹き出しで示した地点)で同日12時の暑さ指数は32.1度でした。その穴吹の東には、暑さ指数が33度以上の分布も見られます。しかしながら、徳島(同じく拡大した図の吹き出しで示した地点)では同日12時の暑さ指数は31.4度でした。このことから、1kmメッシュ暑さ指数は、観測点では捉えることができない暑さも把握できることがわかります。
他の地点の暑さ指数は、同じ時刻では福知山(京都)、海老名(神奈川)、府中(東京)で33度を超えていました。(下表は2024年7月6日12時の環境省発表の暑さ指数ランキング)
1kmメッシュ暑さ指数の分布(上図)で見ると、暑さ指数が33度を超えていた地点の周辺では、33度以上の値が広がっているような特徴はありません。このことは4日と同様に、観測点の暑さ指数は局所的な暑さを示している可能性があります。

2024年7月7日

2024年7月7日は、静岡で最高気温が40.0℃になる等、この時点でシーズン一番の高い気温になりました。
下の表は、気象庁発表の同日の最高気温のランキングです。
静岡県をはじめ、群馬県、山梨県、福島県の地点で高い最高気温でした。
さらに、下の表は環境省発表の同日の日最高暑さ指数のランキングです。
気温のランキングとは異なり、茨城県、東京都、埼玉県、栃木県の地点で高い暑さ指数でした(その中でも静岡は5位に入っています)。
暑さ指数は、気温だけでなく、湿度、風、日射量にも依存するため、気温のランキングと暑さ指数のランキングは一致していません。
気温の高い地域は十分に危険ですが、気温のランキングに注目しているとさらに危険な暑さの地域を見逃すかもしれません。
1kmメッシュ暑さ指数の日最大値の分布(下図)を見ると、環境省発表の暑さ指数のランキングで上位に多かった関東地方で33度以上の高い暑さ指数が広く分布していました。

まとめ

今回は、2024年7月3日~10日にかけての猛暑について、一部の日をピックアップして、暑さ指数の状況を調べ、データからわかることについて考察しました。
環境省発表の暑さ指数は地点情報のため、その場所の暑さを正確に示していますが、地点間の高い暑さ指数を捉えることができていないケースもありました。一方で、1kmメッシュ暑さ指数はメッシュ情報のため、局所的な暑さを把握できないことがありますが、地点情報では捉えることができない暑さの広がりを把握できていたことがわかりました。これは、1kmメッシュ暑さ指数にとって期待していた特性です。地点情報とメッシュ情報のお互いの欠点を補い合い、有効に活用することで危険な暑さを把握しやすくなると思われます。
暑さ指数のランキングが気温のランキングと異なることもわかりました。気温の高いところが注目されがちですが、それよりも危険な地域にいることがわかれば、熱中症対策に意識を向けやすくなるかもしれませんね。

この記事を書いた人

K.Sakurai

気象予報士/技術士(応用理学)/防災士 
総合気象数値計算システムSACRA、データ提供システムCOSMOS及びお天気データサイエンスの開発に一から携わる。
WRF-5kmモデル、虹予報、虹ナウキャスト、1㎞メッシュ雨雪判別予測データ、2kmメッシュ推計日射量を開発。
趣味はバドミントンと登山。

前の記事へ 【データ解説】経験したことのない猛暑の空間的広がりを把握できるようになる!?暑さ指数の推定実況値メッシュデータ
記事一覧へ
次の記事へ 「2024年夏は落雷が多い!?」雷統計データ解説
  1. お天気データサイエンスHOME
  2. 技術情報
  3. 技術ブログ
  4. 2024年7月3日~10日にかけての暑さ指数について(速報)