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2024年夏の猛暑
今年の世界の平均気温が過去最高になるのが確実といわれていますが(※1)、日本の今年の夏も記録的な猛暑になりました。7月以降、全国的に顕著な高温となり、9月に入ってもなお猛暑日となる地域がありました。その要因は、亜熱帯ジェット気流が例年より北へ蛇行したこと、背の高い暖かい高気圧に覆われやすかったこと、日本近海の海面水温が顕著に高かったこと、長期的な地球温暖化と北半球中緯度の対流圏の高温が挙げられており、さらに10月以降も引き続き高温傾向が続きました。(※2,3,4)
今年は長期的な猛暑になったため、猛暑日の統計が注目されました。猛暑日の地点数のデータについては、気象庁ホームページで公開されています。これを見ると、9月21日の7地点が全国で最も遅い猛暑日でした。ただ、各地点の猛暑日の日数や最遅日がわからないので、アメダス統計データで調べてみました。
2024年の猛暑日の日数の上位10位のランキングを表1に示します。最も日数が多かったのは大宰府の62日でした。
表1 猛暑日の日数の上位10位地点(2024年)
最も遅い猛暑日(9月21日)の7地点を表2に示します。愛知県、大阪府、三重県で最も遅い猛暑日が観測されていました。
表2 最も遅い猛暑日の7地点(2024年)
比較のため、2023年も調べてみました。
2023年の猛暑日の日数の上位10位のランキングを表3に示します。2023年は桐生の46日が最も多い猛暑日の日数でした。2024年の大宰府とは16日の差があります。
表3 猛暑日の日数の上位10位地点(2023年)
表4 最も遅い猛暑日の4地点(2023年)
熱中症による救急搬送数も、消防庁の取りまとめ(※5)によると、2024年(5月~9月)は平成20年の調査開始以降、最も多かったとのことでした。
以前の記事と同様に、総務省統計局の都道府県別人口のデータと消防庁の熱中症による救急搬送数データを用いて、2024年と2023年の5月~9月の100万人あたりの熱中症搬送人数を都道府県別に調べてみました(図1)。
図1 2024年と2023年の5月~9月の100万人あたりの都道府県別熱中症搬送人数
図1から、2024年は西日本を中心に2023年より熱中症搬送人数が多かったということがわかります。また、2023年は北陸地方や東北地方で多いことが特徴的です。以前の記事でも秋田県に着目していました。
そのような地域的特徴を頭に入れつつ、次の節では暑さ指数の分布についてお話したいと思います。
暑さ指数の地域的特徴
環境省から提供された全国の暑さ指数の実況値のデータ(※6)を用いて、日常生活に関する指針として「危険」とされる暑さ指数31度以上の日数を調べてみました。2024年5月1日~10月23日の暑さ指数31度以上の日数のランキングを表5に示します。ただし、ここでは沖縄県と小笠原諸島の地点は除いています。
最も日数の多かったのは沖永良部で、上位10位までは全て九州地方の地点でした。
表5 暑さ指数31度以上の日数の上位10地点(2024年5月1日~10月23日、沖縄県と小笠原諸島は除く)
比較のために、2023年5月1日~10月31日の暑さ指数31度以上の日数のランキングを表6に示します。こちらも沖縄県と小笠原諸島の地点は除いています。なお、2024年と期間が異なるのは、執筆時点で環境省から2024年の確定版データが提供されていないためです。
2023年の上位10位までは関東地方の地点が目立ちます。暑さ指数31度以上の日数は、70日を超えているのは2地点で、2024年(14地点※10位より下の地点名は省略)の方が「危険」な暑さの日が多かったことがわかります。
表6 暑さ指数31度以上の日数の上位10地点(2023年5月1日~10月31日、沖縄県と小笠原諸島は除く)
表では限られた地点数になってしまうため、地域的特徴を見るには地図上にプロットすることが必要になります。地点データでも表現できなくもないのですが、ここはやはりメッシュデータを利用する方が便利です。
暑さ指数の地域的特徴を視覚的に捉えるために、1kmメッシュ暑さ指数の日最大値31度以上の日数を算出して分布図を作成してみました。
(※1kmメッシュ暑さ指数は、以前の記事で解説した通り、暑さ指数の実況推定値のメッシュデータです。)
図2は2024年と2023年の5月1日~10月31日の1kmメッシュ暑さ指数日最大値31度以上の日数の分布です。2024年は関東地方から西で「危険」な暑さの日が多かったことが分かります。2023年は、2024年と比べると、2023年は東北地方や北陸地方で暑さ指数31度以上の日が多く、2024年は関東より西で暑さ指数31度以上の日が多かったことが分かります。前述の熱中症搬送人数の地域的特徴と整合的です。
図2 1kmメッシュ暑さ指数日最大値31度以上の日数(左:2024年5月1日~10月31日、右:2023年5月1日~10月31日)
まとめ
2024年夏の暑さ指数等の地域的特徴について、2023年と比較して調べてみました。- 最も多い猛暑日日数は、2024年と2023年で16日の差があった。
- 猛暑日の最も遅い日は、2024年と2023年であまり差はなかった。
- 100万人あたりの熱中症搬送人数は、2024年は西日本で多く、2023年は北陸地方や東北地方で多かった。
- 暑さ指数31度以上の「危険」な暑さの日は、熱中症搬送人数の地域的特徴と同じく、2024年は西日本で多く、2023年は北陸地方や東北地方で多かった。
参考
※1 毎日新聞「今年の世界の気温、初の「1.5度」超えほぼ確実に 温暖化加速」※2 気象庁「令和6年7月以降の顕著な高温と7月下旬の北日本の大雨の特徴と要因について」
※3 気象庁「9月の顕著な高温と今後の見通しについて」
※4 気象庁「2024年10月の天候」
※5 消防庁「令和6年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」
※6 環境省「暑さ指数(WBGT)予測値等 電子情報提供サービス」
この記事を書いた人
K.Sakurai
気象予報士/技術士(応用理学)/防災士
総合気象数値計算システムSACRA、データ提供システムCOSMOS及びお天気データサイエンスの開発に一から携わる。
WRF-5kmモデル、虹予報、虹ナウキャスト、1㎞メッシュ雨雪判別予測データ、2kmメッシュ推計日射量を開発。
趣味はバドミントンと登山。