※本解説は執筆時点の内容です。今後、実際の運用開始までに変更の可能性がありますのでご留意下さい。
既にお知らせの通り、新規電文運用開始2年後(2028年度)に提供終了になる移行措置電文、および、新規電文運用開始時(2026年度)に提供終了になる運用終了電文があり、新規電文は本サービスでもご利用いただけるよう準備を進めています。
移行措置期間があるとはいえ、気象庁の防災気象情報の体系そのものが変わるため、利用中のシステムでは運用開始までに対応が必要になることと思います。
今回は、新規電文への移行の手助けになるよう、現時点で公開されている情報を整理したいと思います。
各新規電文は、この記事の中でページへのリンクを載せています。各ページでは、気象庁から提供されている仕様書・サンプルを電文ごとにまとめていますので、あわせてご確認をお願いいたします。
図1 警戒レベル相当情報(「防災気象情報に関する検討会 最終取りまとめ」より)
各情報は、レベル5〇〇特別警報、レベル4〇〇危険警報、レベル3〇〇警報、レベル2〇〇注意報と表現されます。「レベル2~5」の表記をつけるのが望ましいようです。
発表単位は、洪水は河川ごと、大雨浸水と土砂災害は市町村、高潮は沿岸ごと又は市町村ごとになっています。
従来の洪水警報は、氾濫警報になりますが、後で解説する通り、指定河川洪水予報と水位周知河川に関する情報に集約されます。ただし、洪水予報河川・水位周知河川以外の河川については、大雨警報として発表されます。
図1の大雨浸水に関する情報は「大雨危険度」と表記されていますが、大雨危険度通知VPRN50で土砂災害・浸水害・洪水のうち最も高い危険度を「大雨危険度」と呼んでいるため、「大雨浸水危険度」に改められるようです。
指定河川洪水予報VXKOii・水位周知河川に関する情報VXSUiiに含まれるVXKOii(指定河川洪水予報)は、従来の指定河川洪水予報(国管理)VXKO50-69と指定河川洪水予報(府県管理)VXKO70-89と同じです。ただし、2028年以降に別の新規電文(VXPKii((新)指定河川洪水予報))が運用開始される見込みです。
警報レベル1(早期注意情報(警報級の可能性))は、早期注意情報(明後日まで)VPFD61と早期注意情報(明後日以降の警報級になる可能性)VPFW60を利用することになります。このとき、「VPFW60電文のうち明後日の予報部分は利用せず、明々後日以降の部分を利用すること」とされています。
気象警報・注意報(集約通報)VPWS50と気象警報・注意報時系列情報VPWP50には、氾濫警報・注意報や水位等の見通しの情報は含まれません。指定河川洪水予報VXKOii・水位周知河川に関する情報VXSUiiと併用する必要があります。
「竜巻注意情報VPHW51」は「気象防災速報(竜巻注意)VPHW51」に名称が変わります。
表3に示す全般台風情報は、新規電文運用開始後(2026年度)に提供終了になります。移行措置期間がないので注意が必要です。
私見ですが、警報レベル相当情報として体系整理されているにもかかわらず、洪水に関する情報は集約通報にまとめられていないので、XML電文としては体系整理しきれていないように見えます。早期注意情報が中途半端なのも、既存電文のVPFW60が残るためなのでしょう。
今後も新しい情報が出てくると思いますので、アップデートをお知らせできればと思います。
体系整理を踏まえた気象警報・解説情報XML電文の準備状況と整理
配信資料に関する技術情報第634号の通り、気象庁は、「防災気象情報に関する検討会」の議論の成果にもとづき、令和8年度(2026年度)出水期より、情報の集約と新規XML電文の提供を開始するとのことです。既にお知らせの通り、新規電文運用開始2年後(2028年度)に提供終了になる移行措置電文、および、新規電文運用開始時(2026年度)に提供終了になる運用終了電文があり、新規電文は本サービスでもご利用いただけるよう準備を進めています。
移行措置期間があるとはいえ、気象庁の防災気象情報の体系そのものが変わるため、利用中のシステムでは運用開始までに対応が必要になることと思います。
今回は、新規電文への移行の手助けになるよう、現時点で公開されている情報を整理したいと思います。
各新規電文は、この記事の中でページへのリンクを載せています。各ページでは、気象庁から提供されている仕様書・サンプルを電文ごとにまとめていますので、あわせてご確認をお願いいたします。
警戒レベル相当情報
警戒レベル相当情報は、図1の通り、洪水(洪水予報河川・水位周知河川の外水氾濫)、大雨浸水(内水氾濫および洪水予報河川・水位周知河川以外の外水氾濫)、土砂災害、高潮に分類されます。図1 警戒レベル相当情報(「防災気象情報に関する検討会 最終取りまとめ」より)
各情報は、レベル5〇〇特別警報、レベル4〇〇危険警報、レベル3〇〇警報、レベル2〇〇注意報と表現されます。「レベル2~5」の表記をつけるのが望ましいようです。
発表単位は、洪水は河川ごと、大雨浸水と土砂災害は市町村、高潮は沿岸ごと又は市町村ごとになっています。
従来の洪水警報は、氾濫警報になりますが、後で解説する通り、指定河川洪水予報と水位周知河川に関する情報に集約されます。ただし、洪水予報河川・水位周知河川以外の河川については、大雨警報として発表されます。
図1の大雨浸水に関する情報は「大雨危険度」と表記されていますが、大雨危険度通知VPRN50で土砂災害・浸水害・洪水のうち最も高い危険度を「大雨危険度」と呼んでいるため、「大雨浸水危険度」に改められるようです。
新規電文と移行措置電文の対応(気象警報等)
気象警報等の新規電文について、どの移行措置電文に対応するかを表1に示します(特別警報報知VPNO50は省略)。新規電文は、本サービスのラインナップに合わせて表記します。表1 気象警報等XML電文の対応表
移行措置電文 | 新規電文 | ||
---|---|---|---|
特別警報/警報/注意報VPWW54 | 大雨(浸水) | 気象警報・注意報VPWW55-61 | VPWW55(大雨) |
洪水(その他河川) | |||
大雨(土砂) | VPWW56(土砂災害) | ||
土砂災害警戒情報VXWW50 | VPWW56(土砂災害危険警報) | ||
特別警報/警報/注意報VPWW54 | 高潮 | VPWW57(高潮) | |
暴風(雪) | VPWW58(暴風(雪)) | ||
波浪 | VPWW59(波浪) | ||
大雪 | VPWW60(大雪) | ||
その他注意報 | VPWW61(その他注意報) | ||
洪水(指定河川) | 指定河川洪水予報VXKOii・水位周知河川に関する情報VXSUii | VXKOii(指定河川洪水予報) | |
洪水(水位周知) | VXSUii(水位周知河川に関する情報) | ||
全要素発表状況 | 気象警報・注意報(集約通報)VPWS50 | ||
今後の見通し(時系列) | 気象警報・注意報時系列情報VPWP50 | ||
早期注意情報(明日までの警報級になる可能性)VPFD60 | 量予想 | ||
警報級の可能性 | 早期注意情報(明後日まで)VPFD61 |
警報レベル1(早期注意情報(警報級の可能性))は、早期注意情報(明後日まで)VPFD61と早期注意情報(明後日以降の警報級になる可能性)VPFW60を利用することになります。このとき、「VPFW60電文のうち明後日の予報部分は利用せず、明々後日以降の部分を利用すること」とされています。
気象警報・注意報(集約通報)VPWS50と気象警報・注意報時系列情報VPWP50には、氾濫警報・注意報や水位等の見通しの情報は含まれません。指定河川洪水予報VXKOii・水位周知河川に関する情報VXSUiiと併用する必要があります。
新規電文と移行措置電文の対応(気象情報等)
気象情報等の新規電文について、どの移行措置電文が対応するかを表2に示します。表2 気象情報等XML電文の対応表
移行措置電文 | 新規電文 | |
---|---|---|
府県気象情報VPFJ50 | 顕著な大雨(線状降水帯発生)、顕著な大雪など | 府県気象防災速報VPBS50 |
地方気象情報VPCJ50 | ||
全般気象情報VPZJ50 | ||
記録的短時間大雨情報VPOA50 | ||
竜巻注意情報VPHW51 | 気象防災速報(竜巻注意)VPHW51 | |
府県気象情報VPFJ50 | 解説情報 | 府県気象解説情報VPFJ51 |
地方気象情報VPCJ50 | 地方気象解説情報VPCJ51 | |
全般気象情報VPZJ50 | 全般気象解説情報VPZJ51 |
表3に示す全般台風情報は、新規電文運用開始後(2026年度)に提供終了になります。移行措置期間がないので注意が必要です。
表3 台風全般情報XML電文の対応表
終了電文 | 新規電文または統合電文 | |
---|---|---|
全般台風情報(位置、発生情報)、発達する熱帯低気圧に関する情報VPTI51 | 全般気象解説情報VPZJ51 | |
全般台風情報(総合情報、上陸等情報)VPTI50 | 解説情報 | |
台風位置 | 台風解析・予報情報電文(5日進路・強度予報)VPTW60-65 | |
全般台風情報(位置詳細)VPTI52 |
新規電文の把握と今後
配信資料に関する技術情報第634号や気象防災情報XMLフォーマット技術資料を読みながらこの記事を書いていると、統合される情報の対応を改めて理解できました。この記事も参考に、改めて仕様書をご確認ください。私見ですが、警報レベル相当情報として体系整理されているにもかかわらず、洪水に関する情報は集約通報にまとめられていないので、XML電文としては体系整理しきれていないように見えます。早期注意情報が中途半端なのも、既存電文のVPFW60が残るためなのでしょう。
今後も新しい情報が出てくると思いますので、アップデートをお知らせできればと思います。
この記事を書いた人
K.Sakurai
気象予報士/技術士(応用理学)/防災士
総合気象数値計算システムSACRA、データ提供システムCOSMOS及びお天気データサイエンスの開発に一から携わる。
WRF-5kmモデル、虹予報、虹ナウキャスト、1㎞メッシュ雨雪判別予測データ、2kmメッシュ推計日射量を開発。
趣味はバドミントンと登山。